序章 雷電を纏う者

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   大きな上背に真緑のマントを羽織った顔面傷だらけの大男の名はシング。  マインの道先案内人を買って出てくれた親切〝だった〟人だ。  そして、隣のこれまた大きな上背にまっ黄色のマントを羽織った男の名はジンガ。  彼もマインの道先案内人〝だった〟男である。  先ほどから何故、過去形で記されているかと言うと、言葉通りの意味で、彼らは既にガイドという役割を演じる気はさらさらないようだ。  現に彼らは、マインの命を狙う殺人鬼になり果てていたのだから。 「まぁ、ここは俺達の縄張りだ……。じっくりと居場所を炙り出してやる」  ――この場合、『なり果てた』ではなく、化けの皮が『剥がれた』という表現の方が、彼らには適切かもしれない。  マインは、そう認識を改めることにした。   (ど、どうしよう!? なにかこの現状を打開する良い手はないのか!?)  約二十メートル先に見える二人の会話に怖気が走る。そして、逃げ延びる方法を捻り出す為に脳をフル回転…… 「炙り出してどうするんだよ、相棒」 「ククク……どうする、って。決まってんだろ? そんな事」  ……しようとしたのだが、彼らの交わす恐ろしい言葉と冷徹な笑みでマインの思考はあっと言う間にストップしてしまった。
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