序章 雷電を纏う者

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  (殺される……!)  逃避する方法など頭から吹っ飛んでしまった。  変わりにシングが続けようとした自らの死を意味する言葉が、無意識の内に脳内で浮かび上がる。 (なにか……。方法はっ)  人生最大の危機に気が動転したマインは、足下にあった枝に気づかず――そのまま踏みつけてしまった。 「誰だっ!」  ジンガが鋭い声を飛ばし、素早く振り向いた二人は、マインの隠れる大木を注視する。 「え、あ……お!」  致命的なミスに気づき、マインはようやく正気を取り戻す。だが、もう遅い。 「しまった――ッ!」  急速に近づく声と足音。マインは己の失態に大声を張り上げて、身を隠していた大木から飛び出した。 「いたぞ!」 「あんな所に隠れてやがったのか、あのでくの坊め!」  マインの姿を捉えたジンガとシングが口々に怒号を上げて、彼の背を追走する。  シングの暴言は、温厚なマインとて――これで本人は人並み以上の背の高さを気にしている――聞き捨てならない。  けれども命の懸かったこの状況で、言い返す度胸は無い。  実際のところ、思いを口にする体力も走るエネルギーに使いたいマインは、悔しげに唇を噛み、草木をかき分ける。
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