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「だ、誰かっ……助けてくださいッ! 誰かーッ!」
藁にもすがるつもりで、マインは助けを呼んだ。しかし、返ってきたのは風に揺れる木々のさざめきだけだった。
「助けを呼んでも無駄だ。ここに人が寄り付くわけがない!」
空虚に響くマインの悲痛な願いを、ジンガの無慈悲な言葉が引き裂いた。
猛禽類にも似た彼の瞳は、間近に迫る獲物を狩る事への喜びに満ち溢れ、マインの恐怖を更に煽る。
実際のところ、ジンガの突きつけた言葉は的を射ていた。
人知れず逞しく育った木々が空を覆う鬱蒼としたこの場所は、『キュレルの森』と人々に呼ばれいる。
しかし、それはあくまで地理的な正式名称にすぎない。
磁場の関係で方角を掴む事が難しく。同じ針葉樹が所狭しと連なるために、地元民はこの森を「迷いの森」と呼称していた。
(そんな事ぐらい、耳にたこができるぐらい言われてる)
しかし、此処の地理を徹底的に調べたマインは当然キュレルの森について知っていた。
キュレルの人々からは、森に入るのはやめた方がいい、とも言われた。
しかし、それらの事実や言葉を聞いても、マインは一縷の希望に縋るしかなかった。
でなけば体力的にも精神的にも立ちゆかないのだ。
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