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「み、見ていたのですか!」
「あぁ、偶然近くを通ったときにな。おかげでその時に起きた風で吹き飛んできたゴミ箱にぶつかりそうになった」
「す、すいません」
「別に謝ることはない。けど、もう少し練習をした方がいいと思う」
「れ、練習はしていることはしているのですがあまり上手く行かなくて……。どうやら、私はお父さん達とは違って落ちこぼれみたいです」
「弱気になってどうする」
ポンッと、少し落ち込んでいるハートの肩に優しく手を置いて慰めてあげる。
「何回も失敗したっていいじゃないか。諦めたら何もかも終わりになってしまうんだぞ。だから、諦めずに魔法を使う練習をすればいい」
「トランプさん……」
「……たまには俺も練習に付き合ってあげるからさ」
トランプは困っている人を放って置くことは出来ない性格。それが自分の知り合いであるハートなら尚更の話である。
トランプはまるで子供の相談を聞いている親のように親身になってハートの話を聞いてあげた。
そんなトランプの優しさにハートは心を打たれる。少し涙ぐみながらトランプの目を見つめていた。
「……邪魔だったか」
丁度その時、タイミングがいいのか悪いのかはわからないがトランプ達がいる事務所に一人の人物が訪ねて来る。
訪ねてきたのはこの何でも屋の社長であるダイヤの兄であり、この王都では少し名が通った武器職人であるエースであった。
やって来たエースは今の二人を見るなり何かを勘違いした様子で先ほどの言葉を口にする。
当然ながらこのようなことを言われて何もないはずがない。次の瞬間、ハートは一気に顔を赤らめて恥ずかしがり、自分に優しく声をかけてくれたトランプを両手で思いっきり突き飛ばしてしまった。恩を仇で返すとはまさにこの事であろう。
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