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「お願い兄ちゃん! あたしが作る何でも屋のオーナーになって!」
……ここは王都にある商業地区のとある鍛冶屋の軒先。そこで今、女の子が両手を合わせて目の前にいる男に頼み込んでいた。
頼み込んでいる少女は今から二十年くらい前に魔人の脅威からこの世界を救った二代目ルベルスクの騎士アルベルス。その彼の愛娘で来年十六歳になるダイヤ。
女性にしては少し高い身長と少し痛んだセミロング茶髪を持つ周りから見てはとても可愛らしい女性。将来綺麗になると今からでも予想できる。
そして、そのダイヤが必死に頼み込んでいる相手は彼女の一つ上の兄であるエース。
身長百七十くらいあり、赤と青のオッドアイに彼女と同じ茶髪の髪をしている。顔は幼く炭で汚れているがまだまともな顔つきをしていた。
エースはいまだに自分に向かってお願いをしているダイヤを見ながらため息をつく。
「駄目だ。俺は鍛冶屋の仕事で忙しいからそんな暇はない。他をあたれ」
「そんなことを言わずにやってよ。それに兄ちゃんの腕はもう結構なもんだから修行しなくてもいいじゃん」
「結構なもんでは駄目なんだ。
俺の目標は曾祖母が作ったこのブレスレットを越える武器を作ることだ。
今よりも腕を磨かなければいけないからお前の道楽に付き合っている暇なんてない」
「道楽なんかじゃない! あたしだって父ちゃんみたいなルベルスクの騎士になるのに必死なのよ!」
「なら今は我慢するんだな。お前も来年で十六になって軍に入ることを許可される。それまで待て」
「嫌! あたしは一日も早くルベルスク騎士になりたいのよ! だから兄ちゃん、あたしがやろうとしている何でも屋のオーナーになって!」
「何回も言うようだが駄目だ」
「もういいわよ! 二度と兄ちゃんなんかにはもう頼まない!」
ほとんど逆ギレ。ダイヤは何の罪もない兄であるエースに怒鳴り散らしてからどこかに向かって歩いていった。
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