1297人が本棚に入れています
本棚に追加
「エース、今の娘誰?」
怒りながら歩いていくダイヤと入れ代わる形で一人の女性が歩いていく妹のダイヤを呆れた表情で見ていたエースの元に近づいてきた。
エースは女性が近づいてきたことに気づくなりダイヤに向けていた視線をその女性へと向ける。
「あぁ、今のは俺の妹のダイヤだ――カリ」
カリ・クロイツァー。昨年度の軍での新人隊員ではナンバーワンの実力を持つ天才であの侯爵クロイツァー家の一人娘。
ふわふわとウェーブかかった黒髪をしており、伸長は百五十ぐらいしかなくとても可愛らしい容姿をしている。
性格は純粋であまり他人とは関わろうとはしない。だが一部の人間には心を開く――特に今目の前で話しているエースには。なんでも彼が裏表ない性格でとても落ち着くかららしい。
彼と知り合ってから半年経つ今では暇のときは毎日彼の顔を見にここを訪れている。
「エース……妹がいたんだ」
「あぁ、一つ下にな。名前はダイヤと言って少しわがままで短気。気に食わないことがあればすぐに怒る厄介な妹だ」
「でも、大切な妹だよね?」
「まぁ……たった一人の妹だから大切は大切だ」
「そう。……ところで、何でエースの妹のダイヤはあんなに怒ってたの?」
「あぁ、あいつがやろうとしている店のオーナーになってくれって言われて断ったからだ」
「店?」
「何でも屋だ」
「何で何でも屋をしたがるの?」
「理由なんて特にない。ただ、あいつは夢に近づくために何でも屋をやろうとしているだけだ」
「夢?」
「親父――それから祖父と同じルベルスクの騎士になることだ。あいつはルベルスクの騎士になって全世界に自分の名を知らしめたいんだ」
ダイヤの夢はルベルスクの騎士になって有名になりたいだけ。
それだけではとても呆れた理由。兄であるエースにとっては正直どうでもいい話。
でも……その時のエースの表情はどことなく悲しげなものであった。
最初のコメントを投稿しよう!