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「兄ちゃんのケチ。店のオーナーくらいやってくれたっていいじゃない」
兄であるエースに自分が開く店のオーナーになることを断られたダイヤは今、久しぶりに来る王都の街を不機嫌になりながらぶらぶらと歩いていた。
彼女は久しぶりに王都に戻って来るが王都にはそれなりに知り合いと言うものはいる。
でも、今はそれどころではない。彼女は何としても自分の店を持ち、一刻も早くルベルスクの騎士になろうと考えていた。久しぶりに知り合いに会う時間も惜しいと考えるほど必死であった。
「兄ちゃんっていつもあたしがやろうと言うことは否定的なんだから。こうなったら……適当な人を捕まえてあたしの店のオーナーになってもらい断った兄ちゃんのことを見返してやる。そうと決まったら――」
ペチャクチャと独り言を話ながら歩いていたダイヤは不意にその場に立ち止まり辺りを見渡して何かを探し始める。
どうやらその探していたものはすぐに見つかったみたいだ。少しだけ口元を緩ませてニヤリと笑いその方向へと一心不乱で走っていった。
「……元気そうだな」
一心不乱にある方向へと走っていくダイヤを人混みの中から見つけ少しの間見つめていた男がいた。
彼はダイヤを見つけたときは少し驚いていたが、今は何だか懐かしげな表情をして少し口元を弛ませていた。
そんな男の元に旅の友であろう男がゆっくりと近づいてくる。
「《トランプ》、何かいいことでもあったのか?」
「いや……別に。それより、早く職業安定場に行って仕事を探しに行くか」
「あぁ」
二人は軽く返事を交わしてから目的の場所、自分達の仕事を探すための職業安定場へと向かっていく。
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