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盗賊は別に逃げるのを諦めたわけではない。逆にこの逃走劇に決着をつけようとしている。
盗賊は川の中に入ることはなく川面に足をつけただけで軽くジャンプし、それから何もなかったかのように先ほどまで隣を走っていたもう一人の盗賊の元まで走っていく。
不可思議で意味不明な行動。けれど次の瞬間にはその行動の意味を成す。
盗賊が足をつけた地点からみるみるうちに川面が膨らんでいき、最終的にその膨らんだ水は人の形を作ってしまった。
そして、盗賊達を追い掛けていた警察官達に向かっていき彼ら押し流して行った。流石のエリート警察官達も自然の力には勝てなかったと言うわけだ。
「アハハ、また儲けたな。これじゃあいくら金を使っても減りはせいへんな」
上手いこと警察官達をまいた二人の盗賊。彼らは今、先ほどまで自分達がいた王都を見渡せる丘へとやって来ていた。
先ほど水を操ると言った不思議な力を使った盗賊は自分達が盗んだ窃盗を見つめて大笑いをしていた。
それとは打って変わってもう一人いる盗賊は少し心配な目でもう一人の盗賊を見ていた。
「……お姉ちゃん、もうこんなことは止めようよ。他人のものを盗んでお金を稼ぐなんて……」
「アホ、うちらはこうでもせいへんかったら一銭も稼がれへんのや」
「でも……もし捕まったら……」
「捕まらへん捕まらへん。うちの能力があったらまず捕まることはあらへんわ。例え捕まえられても逃げるし」
「お姉ちゃん……」
「そんなしょうもないことを言ってる暇があったら次にいくで。次の獲物はあの大国ルベルスク国の先代国王が愛用していた指輪や」
「今度はあのルベルスク国を攻めるの……」
「そやで。今回の盗みはオードブル、次のメインデッシュを食べるための前菜みたいなもんや」
「や、止めようよ……」
「うるさい! あんたがうちに指図を出来ると思ってんのか!」
「そんなことはないよ……」
「ならすべこべ言わんとうちについてこい!」
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