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「ち、違います! 私とトランプさんはそのような関係ではありません! それにトランプさんにはダイヤちゃんと言う好きな人もいます!」
「な、何を言っているんだハート! 俺は別にダイヤのことなんてなんとも思ってない!」
「悪い、少しからかっただけだ。それから、俺はトランプがダイヤが好きだって言うことも知ってる」
すました顔で冗談を言っているエース。彼は王都の住人達が思っているほど堅物な人間ではない。少し落ち着いてあまり表情を変えないだけでちゃんと笑ったり泣いたり冗談も言える。それから他人をからかったりすることも出来る。
「エースも何を言っているんだ!」
「本当のことを言って何が悪い」
「だから――」
「このくらいでトランプを弄るのも止めにしよう。ところでダイヤはいるか?」
さらに何かを言おうとしていたトランプの声を遮ってエースはここに来た意味を話し始める。
これによってトランプが調子を崩してしまった。頭をかいて少しイラついた様子で語り始める。
「ダイヤならシュウの発明を見にクローバーと一緒に広場に行ったぞ」
「発明?」
「つい昨日に完成した《バイク》という乗り物だ。何でもシュウが言うには自動で動く自転車みたいなものらしい」
「そうか……。ならトランプ、お前が代わりに話を聞いて欲しい。いや、どちらかと言えばお前に聞いてもらった方がいいか。今思えば、あいつのことだから話したって理解出来ないかも知れないからな」
「……エース、お前は自分の妹のことを馬鹿にしすぎたと思うぞ」
「馬鹿だから仕方ないだろ」
「……否定はしない」
「二人とも……」
あまりの二人のダイヤへの扱いにハートは彼女が可哀想だと思った。同時にこの二人にはあきれ返ってしまった。
ただ、彼女も口には出さなかっただけでそれに近いことを思っていたというのはここだけの話である。
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