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「……クローバー、お前はあれを見て怖いとは思わないのか」
「全然! むしろ面白いと思う!」
「そうか」
今、シュウは直感した。この隣にいるクローバーの思考回路は子供。面白いと言うものは例え怖くてもやりたがろうとする。
この乗っているダイヤすら怖いという状況でそのようなことを言っているのがその証拠であろう。
「シュウ兄! 俺もあれに乗せて!」
「ちゃんと操縦の仕方を覚えてからな」
「ありがとう! ……それにしても、よくあんなものを作ることができたね。たった一ヶ月で一からあれほどのものを作るなんて普通なら出来ないよ」
「……一からじゃない」
「今なんて言ったの?」
「何でもない」
「そう。……ところで、シュウ兄はキサキ姉のことはどう思う?」
ここで、クローバーは前々から気になっていたことをシュウへと聞いた。それがシュウがキサキのことをどう思っているかどうかということだ。
キサキは毎日とはいかないが週何回かはシュウの元に訪ねてきており、そのたびに積極的にアピールしている。
忙しいシュウのためにお茶を入れたり、休みの日にどこかに行こうかと誘ってみたりして。
しかしシュウは研究のことしか興味がないのでキサキのその誘いを断り続けている。
「別に、ただの顔馴染みくらいにしか思ってない」
「そっか」
「そういうクローバーはキサキのことはどう思っているんだ?」
「大切な人、好きやそんなことなんて関係ないくらい大切な人。強いて言えば兄弟っていう感じかな?」
「そうなのか」
「うん。それに、キサキ姉は俺の命の恩人なんだ」
それ以上は語らずクローバーは青い空を見つめる。その時の表情はいつもの能天気なものとは違いどこか哀愁が漂うものであった。
シュウはそのクローバーの表情を見て何かあるのだとまた直感する。でも、それは自分の口から聞くのは野暮だと思い何も聞かずに黙ることにした。
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