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「……しつこいようだがもう一度だけ言うぞ。今回の任務に参加するのはダイヤ・トランプ・クローバーの三人だ。お前達二人はただの客人、例え盗賊達が来ても戦いには参加するな」
「わかっている。そもそも俺は盗賊達と戦うつもりはない」
「私も……戦いというのは遠慮しておきます」
三人の後に出てきたエースはもう一度、シュウとハートの二人に対して釘を差すように言う。
これが二人がここに来ているわけ。彼らはただの観光客としてトランプ達に同行しているわけだ。
そして、二人に対してもう一度釘を差したエースは視線を二人から一人立ち尽くしているトランプの方へと向けた。その時彼の表情は何やら考え込んでいるようなものだった。
「……エース、何を考えているの?」
今のエースは不思議に思う。そう思った今回この任務のリーダーであるカリはエースの顔を覗き込んで聞く。
エースはカリに聞かれたことで考えるのを止め、今度はトランプからカリへと視線を移し変える。
「いや……何でもない」
「そう。それより、私達は美術館に向かおう。そろそろ指輪も降ろされると思うから」
「そうだな。ダイヤ達には後からこっちに来てもらうか」
今から観光をしに行こうとするダイヤを置いておき、エースとカリの二人は一足先に美術館へと向かっていった。
その間、エースはあの時のことを思い出していた――あの二日前のトランプとの戦いのことを。
結果的に言うと勝負の方はエースの勝ち。当たり前だ、彼に勝つためには上級魔物以上の実力を有していなければならないのだから。これは当然の結果である。それでもエースはが思っていた以上に追い詰められてしまったのも事実。
(あの時のあいつはまるで……)
今も脳裏に焼き付いているあの時のトランプ。あれはまるで……。
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