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「じゃあどうやってあいつは――」
「トランプ、俺はここで別れるから後は頑張れ」
一人、月を見上げながら考え込んでいたクイーン。その考え事はある人物の声が聞こえてきたことによって止められることになってしまった。
どことなく聞き覚えがある声。そう思いクイーンは夜空に浮かんでいる満月を見上げるを止めてその声が聞こえてきた方向へと顔を向ける。
そこには先ほど自分が怪しいと思っていた男――シュウが、仲間達と離れて自分がいるベランダに向かって歩いている光景があった。
クイーンはシュウがこちらに来ていることに気づくなり視線を向けるのを止め、自分から何メートルも離れて立っている彼を横目で見る。
横目で見ていてもわかる。彼が何かした――のではなく彼のかっこよさが。顔立ちは一級品で背も中々高い。そしてミステリアスでクール。この月夜がよく似合う。同時に先ほど聞こえていた女性の悲鳴声が彼が原因だとわかってしまう。
そんな風にクイーンが自分のことを見ていることに気づいているのかわからないシュウ。
視線は一切クイーンに向けていない。彼が見つめるのは先ほどまでのクイーンと同じ夜空に浮かぶ満月だけ。
その満月に突如として、彼は服のポケットから取り出したあるものを向け、少し経ってからまたポケットの中へと戻した。
クイーンの位置からではそれが何なのかは詳しくはわからない。ただ手のひらサイズの小さな長方形の形であることだけはわかった。
(もしかしてあいつ……写真でも撮っていたんか? いやでも、あんな小さなカメラなんてないやろ? じゃあ一体、あいつは何をしていたんや?)
不可思議な行動をした彼にクイーンの興味はさらにかき立てられる。
(もしかしたら、うちが思っている以上の凄いお宝じゃないか?)
もし、自分が思っている通りお宝、もしくは珍しいものなら大金になるかも知れない。
そう思ったクイーンはあれが何かやシュウがどういう人物かを確かめるために彼へとアプローチをかけようとする。
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