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「……隣、いいですか?」
今回の護衛対象である王家の指輪が見える範囲にあるベンチに座っていたトランプ。
他の人達は二人一組のペアとなって会場を歩いて怪しい人物を捜していた。エースとカリ、ダイヤとクローバーと言った具合に。
当然五人なら一人余る。そのトランプは王家の指輪に怪しいものが近づいてこないかを見張っていた。
王家の指輪には怪しいものは近づいて来ない。だが代わりにそれを見張っていたトランプに一人の女の子が近づいてきた。
その人物とは、客としてトランプ達の任務についてきたハートだった。
「あぁいいぞ」
「では、お言葉に甘えて座らせてもらいます……」
ハートはトランプからの許可をもらってからトランプの隣に腰を下ろした。
ハートがトランプの隣に座ったまではよかったがそれ以降は何も話をすることはなかった。
トランプは任務に集中しておりハートも何を話せばいいのかがわからなく悩んでいた。
二人の間には沈黙が続き、聞こえるのは周りの人達の会話の声だけであった。
「ト、トランプさんはあれでよかったのですか?」
やっと、ハートが話す内容を見つけてトランプに話し掛けた。内容は今自分が一番気にしていることだ。
「あれって?」
「ダイヤちゃんとクローバー君を二人っきりで行動させるのは……」
「何かまずいことでもあるのか?」
「大アリです!」
いつもは大人しくて人の二・三歩後ろをついていくハートだが、人の恋――特にトランプの恋のこととなると人が変わったみたいになる。
今回も、座っていたベンチから勢いよく立ち上がって先程の言葉を大声で叫んだ。
注目される行動。それを証拠に二人の近くにいた客達は何事かと思い一斉にハートの顔を見た。
その事に気づいたハートの熱は一気に冷めてしまい恥ずかしくなりながらもう一度ベンチへと静かに座った。
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