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「私は……トランプさんのことが好きです」
二人の間に流れていた沈黙を破るようにしてハートは声を発した。
しかも内容が突拍子なもの。聞くものから聞けばトランプへの告白だった。
だが、ハートにはそのつもりはない。先ほどまでのことでもすぐに赤くなっていた彼女の表情が赤く染まっていないのがその証拠である。どちらかと言えば今のハートの表情はすごく悲しげなものであった。
「いつも優しくて他人のために必死になれるトランプさんのことが好きで――もちろん、人間としてですよ」
「あぁわかってる」
動揺も嬉しい感情も表すことはなくすぐに言葉が返ってくる。彼に対してそれ以上の気持ちがないハートでも少しショックでムカつくこと。少しくらい何か思ってもいいのではないかと不機嫌になりながらも話を続ける。
「……そのトランプさんが自分の幸せよりも他人の幸せを優先するのが私は見ていてあまりいい思いはしません。
ですから、もう少し自分の幸せを考えてください。
それは、前にトランプさんが私に言った台詞です。
トランプさんは人にもう少し自由に生きろと言いながら自分は自由に生きていません。
それはちょっとおかしくはないですか?」
「……俺はいいんだ」
「何故ですか?」
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