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「お待たせいたしました。」
ウェイトレスが私達の沈黙を破って、注文通りの飲み物を運んできた。
「ごゆっくりどうぞ。」
再びウェイトレスが軽く会釈して下がっていった。
「何はともあれ、私これからどうしたらいいのかしら?天使がいたからさっきは逃げられたけど、私には天使ほども人間離れした運動神経はないし...。」
憂鬱そうに呟く綾の頬を、今度は私が両手で挟む番だった。
「バレー部の期待の星が弱気なんてらしくないな、だいたい私が狙われてるの知ってて綾を見捨てる人間に見えるのか?打開策はなんてないけど、心配しなくてもちゃんと最後まで私は綾の側にいるから。それによく言うだろ?一人じゃ無理でも二人ならって。」
私は豆鉄砲を喰らった鳩みたいな表情の綾に、不敵な笑みで励ました。
「それに話しただろ?アルメデスに関しては綾だけの問題じゃない、私も立ち向かわなければならないんだ。生まれた時から決まってるんだよ。」
「そうね、いつまでも弱気でなんていられないわ。私も簡単にあいつらの思い通りになんてならない、天使みたいに強くならなきゃね。」
綾はいつもの明るさを取り戻し、軽くウィンクして見せた。
その瞬間、私はいつもの綾だと実感した。
「あのぅ、すみません。」
そこに突然、茶髪に茶色い瞳をした優男風の青年が現れた。
背はそこそこ高く、顔立ちもそんなに悪くない。笑うと目がなくなるタイプだ。
「はい?何か?」
綾が不審そうに返事する。
「この辺りに香月流華道道場があるらしいんですけど、わからなくなってしまって...良かったら教えていただけませんか?」
その青年は後頭部に片手をあてながら、申し訳なさそうに頭を下げる。
ガタンッ!
「痛っ...なっ!?」
「天使!?」
私は綾が止めるより先に、その青年の腕を素早く後ろで捻り伏せ、容赦なく動きを封じた。
「天使、何してるの!?」
綾が私の大胆な行動に慌てて席から立つ。
「学校から私達の後を尾けていたのはお前だな?何が目的で私達に白々しい口実を並べて近づいた?」
私はさらに青年の腕を徐々に捻りながら尋問する。
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