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ベーコンから香ばしい匂いが漂ってきたので裏返して両面を加熱する。
この時に裏も焼きすぎると旨味が逃げちゃうから裏返したらすぐ火を止めて余熱で焼いてね?
これ重要。
「さて、できたよー」
全てを盛り付け彼女の前に並べていく。
「お箸とナイフ、どっちがいい?」
「…オ、ハシ?」
「あー、箸、わかんないか」
そりゃそうだよね、見るからに箸文化には携わった事なさそうだもんね。
質問を無かった事にして、そのままナイフとフォークを並べる。
「はい、お待たせ。こんな物しかなくてゴメンねー?」
並べている間も彼女のお腹からは『ごぎゃるるる』という、何か異形の生物の鳴き声みたいな音がしてたからとりあえず口にしてくれると信じたい。
「ぁ、ぁ…ありがとうございますっ!」
言うが早いか彼女はスープに手をかけると一気に口へ。
「あぶっ!」
そりゃ熱いって。
「はいはい、熱いから気をつけてね?」
ティッシュで彼女の口を拭ってあげると、彼女は『あいっ!』と元気に返事をして食事に戻っていった。
「あの…アナタは?」
突然手を止めて問い掛けられる。
その時オレは冷蔵庫を閉めていた所だった。
冷蔵庫から取り出したそれを見せながら彼女に伝える。
「あぁ、オレはコレがあるから」
彼女に見せたのは、キンキンに冷えたビールと、常温で保管しておいたチーズであった。
……誰だ朝から酒飲むダメ人間とか言うヤツは。
いい年したオッサンの仕事の無い朝なんか大体こんなもんだっ(嘘)
「……?」
酒だというのがわからないんだろう、彼女は首を傾げている。
かわいいな…いや、変な意味じゃなくね。
「んー、とりあえずオレの事は気にしないでいいから、召し上がれ?」
そう伝えると、彼女は再び明るい、太陽の様な笑顔でナイフとフォークを手に取るのだった。
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