愛しい君 くく竹

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「落第したらどうすんだよっ!」 明日のは成績に関わるテストだ 落第なんかしたら困る だから言ったのに 「落第すれば?」 なんて返ってきた 「お前なっ!?落第したら一緒に卒業できなくなるかもしれないんだぞ!?」 「大丈夫だよ」 「何がだよ!?」 唸りながら聞いても兵助は平常心だ 「はっちゃんくらい俺が養っていける」 「っ………」 だけど、いくらなんでも 今の言葉は酷いと思う 気がつけば兵助の頬を叩いていた 「………」 「…嫌い…」 それだけ呟いて場所を戻る ――――――――――― 養うなんて1番言われたくなかった 俺は兵助のお荷物になんかなりたくないから いつも隣で立ってたい なのに背負われるのなんか絶対に嫌だ 「…今日はおしまいにしようか」 そんな事を考えてればそう告げられた 「………」 「………」 「………」 素早く筆と紙を片付け、何事もなかったように俺は襖を 「…待って」 開けかけた 手をとられて振り返らさせる 「………」 「言葉が足りなかったから言うけど…養いたいんじゃなくて、何があってもはっちゃんには、ずっと傍にいてほしいんだ…」 真っ直ぐな目で見られる 素直にこの言葉は嬉しい だって、養ってでも傍にいたい 背負ってでも傍にいてほしい、って言ってくれたことが 「…俺は…お前の隣を歩きたいんだ、背負われるのは嬉しいけど嫌なんだ…」 だから素直に伝えれば、兵助はまた俺が苦手な顔をした 「…本当に、…」 「!?」 「君は愛しいよ」 引き込まれてふたたび腕の中に入れられる 「……」 「…さっきはごめんね…?」 「俺こそ…殴ってごめん…痛いか…?」 まだ赤い頬を触れれば兵助は小さく顔を歪ませた 「少しだけだよ…はっちゃん…」 軽く押し倒されれば襖は兵助の手で閉められた 情けない だけどまた、お前に流されてしまう 馬鹿なのは俺だってわかってる 愛しそうに触れられる場所が、凄く気持ちがいい 愛しいんだ
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