一の誤り くく竹

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一の誤り くく竹

あの世と隣り合わせの道 それが忍という道 その道はあまりにも長く、険しい道なんだ ――――――――――― 「…離せよ…」 「…もう少しだけ…」 抱き締められてる八はずっと俯いてる 「何回目だよ」 「……」 「………」 「…はっちゃん…やっぱり俺、「言うなっ!」 静かな部屋で八の声だけが響いた 「…でも…」 「やめろ!」 痛いくらいに抱き締めてきた兵助の肩を強く押し、八は兵助から距離をとった 「………」 「…お前もわかってんだろ?」 「…なにを…?」 「とぼけんなっ!…俺たちはこれから別々の道を歩むんだ…けして混じることなどなく…」 「そんなの…「わかってない!わかってないから…そんなこと…」 悲鳴のような八の声に兵助は何も出来ない 「…俺たちは…忍になるんだ…だから…だから…」 「それでもっ、俺はもうはっちゃんがいなきゃ…」 「言うなよっ!」 「…じゃあ…はっちゃんはこのままお別れでいいの…?」 「…いい…」 「……」 兵助の手を優しく退け、八は立ち上がった 下を向いたまま 「……」 「…プロ忍して、20過ぎたら女作って、子も出来て、幸せな家庭作って…それで…良い具合に嫁との関係が辛くなったら…お前と……俺が負けるなんてあり得ないけど…死にかけたら言ってやるから…愛してたって…だから…いいじゃん…それで…」 「……」 「…お前も知ってんだろ?辛いに一を足したら幸せだって…忍の道はその一…お前の幸せ…」 「……」 下から顔を覗いた兵助は、ただ、 「…わかった…」 頷いた 優しい涙を流しながら 「……」 「…なら、はっちゃんは絶対に俺が葬るから」 「…やれるなら、な…」 「…ははっ…じゃあ…荷物とってくるから…待ってて」 「…ああ…」 真っ暗だった部屋は兵助に開けられた襖から外の光が溢れた 「……っ…」 ―もしも、出会わなければとか もしも、付き合わなければとか 理屈やもしもで説明なんか出来ない 好きなってしまった 愛してしまった お前と幸せな結末を望んでいた だけど…― 「…忍だから…」 ―これが 1番幸せな結末 これでよかったんだ あいつは良い男だから、その内優しい嫁さんができるから、 お前を幸せにできる嫁さんがきっといるから、 きっと…― 「…」 前から決めてた結末 これで筋書き通り 「…お前も俺も幸せになれる…」 八は優しく涙を流した
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