少年とアスペルと十字架

2/3
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
どうやら僕は、生まれたらしい。銀行員の父とまだ2歳の兄に望まれて祝福されて 母に疎まれて憎しみを浴びて… 母の幼児虐待…と言っても昭和50年ごろにそんな単語もなかったし、今のようにニュースを騒がせてはいなかった。 父と母は、見合い結婚だった。母にとって父は、かっこうの獲物だった。当時、父は銀行のエリートコースを歩んでいたからだ… 父が、出勤すると目を背けたくなるような光景が、始まった。兄だけが、その実態を知っているが、口にすれば思い出してしまうので30歳を越えた今でも口を開かない…ただ、トラウマだけが2人の兄弟に痛々しいほど残ったそれが母がいたという痕跡だ。 それしか母を証明できるものは、我が家には残されていない…
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!