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3階に着き、あたしは腰をぽんぽんと叩いた。
かろうじて息切れはしなかったが、日頃の運動不足はこういう時に出るのだ。
一息つき、ふと続く廊下を見ると、各部屋の前に長机があって、女性と男性が一人ずついた。どうやら受付を行っているようだ。
結婚式みたいね…。
感想はどうでもいいものだったが。
迷わず第2会議室の前まで行くと、まず綺麗な女の人がいて「お名前は?」と聞かれた。
綺麗な人は声も綺麗なんだねぇ。ひそかに感心。
「佐山 優(さやまゆう)です。」
綺麗な人が名簿にチェックを入れてくれる。
「はい。入社おめでとうございます。名札を受け取って、入室して下さいね。」
綺麗な人が綺麗に微笑んで言ってくれた。
女性の名札には『雨宮』と書いていた。
(あまみや)
あたしは心で名前をなぞる。
薬指には真新しく光るプラチナリング。どうやら新婚みたいだ。
「有難うございます。」
あたしも微かに笑って応える。
不意に
「佐山さん。」
名前を呼ばれて、声のする方を向く。受付の男の人だった。
女性は座って作業しているため、男性の顔を見るためには視線を上に向けなければいけない。
初めて男性に目を向けた。
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