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「シェーラは謹慎中で、ブラッグ以外の師長級は皆国外だ。粗相の無いようやれよ。
私もマーズは先生に押しつけられた」
「よく言うぜ」
アリスンは、最後尾、トールの隣に来た。
「儀式が終わったら、ブラッグを止める。引くんじゃないぜ」
「は、はい」
この街最強の錬金術士には、今、指導すべき弟子がいない。
若くはないが、ガレスほど老いてもいない彼は、身寄りがない。妻も子もない。
一人前になった弟子で彼を裏切らなかったのは1人だけだ。
後は事故や争いで死んでいる。
『師にするならエライ方がいい』
という、エリアルの単純な持論には、アリスンは賛成しかねた。
しかし、独身のまま壮年期を過ぎ行くブラッグという視点で考えると、彼に新しい弟子が…というのは、面白いかも知れない。
やると決めたら早い彼女は、昨日のうちに役所で今日の儀式の担い手を確認し、手続きを整えた。
ブラッグの人となりを聞いたトールは、会ってみたいというか、見てみたいと思い始めていた。
そんな何でもできそうな人が、たくさんの人から必要とされそうな人が、家族や弟子に恵まれないのが意外だ。
…怖かったら里に帰ろう。
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