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アイゼルは見た。
衝撃的な登場の仕方をした錬金術士が、帰りは歩いて部屋から出ようとするのを…
「ブラッグ様、ちょっと待ってください」
すかさず、銀髪の若い錬金術士が祭壇の間の出口に立ち塞がった。
「なんだね」
「3階の食堂の朝定食なら」
アリスンは食券を二枚見せた。
律儀に財布から銅貨を出しながら、ブラッグは──きっとこの、黒ずくめの紳士がブラッグなのだ──若い部下に問うた。
「何の用だね」
「お忙しいところすみません…弟子いりませんか?」
「どこだ」
「ここに」
アリスンは、トールを前にぐい、と出した。
ブラッグは、自分の臍ぐらいまでしか背がない若者を見下ろし、面倒くさそうに唸った。
「よ…よろしくお願いします。
神器を直せる鍛冶職人を目指しています」
「どういう風の吹き回しだ」
「たまたま見つけたといいますか。隠れ里あたりで」
ブラッグの視線が、何をやっておるんだ貴様は、と言っているように、ロックとアイゼルには見えた。
派閥以前に、上司と部下の関係があるらしい。
「で、どうですか?こいつ」
さらに押す。
アリスンの神経はかなり太い。
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