3つの無理難題

2/6
前へ
/227ページ
次へ
アイゼルは見た。 衝撃的な登場の仕方をした錬金術士が、帰りは歩いて部屋から出ようとするのを… 「ブラッグ様、ちょっと待ってください」 すかさず、銀髪の若い錬金術士が祭壇の間の出口に立ち塞がった。 「なんだね」 「3階の食堂の朝定食なら」 アリスンは食券を二枚見せた。 律儀に財布から銅貨を出しながら、ブラッグは──きっとこの、黒ずくめの紳士がブラッグなのだ──若い部下に問うた。 「何の用だね」 「お忙しいところすみません…弟子いりませんか?」 「どこだ」 「ここに」 アリスンは、トールを前にぐい、と出した。 ブラッグは、自分の臍ぐらいまでしか背がない若者を見下ろし、面倒くさそうに唸った。 「よ…よろしくお願いします。 神器を直せる鍛冶職人を目指しています」 「どういう風の吹き回しだ」 「たまたま見つけたといいますか。隠れ里あたりで」 ブラッグの視線が、何をやっておるんだ貴様は、と言っているように、ロックとアイゼルには見えた。 派閥以前に、上司と部下の関係があるらしい。 「で、どうですか?こいつ」 さらに押す。 アリスンの神経はかなり太い。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加