3つの無理難題

3/6
前へ
/227ページ
次へ
ブラッグは、自分の娘ぐらいの歳の騎士服の部下と、見た目はそれより若いドワーフの青年を見下ろした。 人間で言うなら20歳前後か… 「手を見せ給え」 直立不動で両脇に握りこぶしを下ろしていたトールは、両手を開いて突き出した。 童顔と運動不足気味の体格に対し、手には道具タコがあり、鎚が当たる丘は皮が厚く盛り上がっている。 指の筋肉がついた、器用さで働く者の手ではある。 だが、この手なら、ただの鍛冶職人になるなら、今までどおり両親か祖父母に習えばよい。 隠れ里の高齢化事情までは思い至らなかったブラッグは、新しい弟子は断ることに内心決めた。 「…そういえば、さっき猫って聞こえなかった?」 「俺じゃねぇ。師匠だ」 「猫の錬金術士がいたの!?」 他にも色々いるぞ、と外野の話を脇で聞きながら、アリスンはブラッグの顔色を見た。 やる気なさそうだ。 が、職務に忠実なのが、この偉大な先輩の長所で弱点だ。 「ブラッグ様、試験を課してはいかがですか?」 この部下は斡旋に本気なのだ…とブラッグは思った… 直弟子が探していた宝物は何だったか。 かち合わせればどう転んでも損はないか。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加