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ブラッグは、自分の娘ぐらいの歳の騎士服の部下と、見た目はそれより若いドワーフの青年を見下ろした。
人間で言うなら20歳前後か…
「手を見せ給え」
直立不動で両脇に握りこぶしを下ろしていたトールは、両手を開いて突き出した。
童顔と運動不足気味の体格に対し、手には道具タコがあり、鎚が当たる丘は皮が厚く盛り上がっている。
指の筋肉がついた、器用さで働く者の手ではある。
だが、この手なら、ただの鍛冶職人になるなら、今までどおり両親か祖父母に習えばよい。
隠れ里の高齢化事情までは思い至らなかったブラッグは、新しい弟子は断ることに内心決めた。
「…そういえば、さっき猫って聞こえなかった?」
「俺じゃねぇ。師匠だ」
「猫の錬金術士がいたの!?」
他にも色々いるぞ、と外野の話を脇で聞きながら、アリスンはブラッグの顔色を見た。
やる気なさそうだ。
が、職務に忠実なのが、この偉大な先輩の長所で弱点だ。
「ブラッグ様、試験を課してはいかがですか?」
この部下は斡旋に本気なのだ…とブラッグは思った…
直弟子が探していた宝物は何だったか。
かち合わせればどう転んでも損はないか。
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