はじまり

5/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「「「函南くん、今までありがとうーっ!!!」」」 先生にお先にどうぞ、と促され教室に入った途端、パンパンというクラッカーの破裂音とともに、みんなは一斉に声をあげた。多少は予想していたけれど、驚きは隠せなかった。 クラッカーから飛び出る色とりどりの紙テープを頭にのせながら教室を見渡すと、教室の周りには折り紙でつくったわっかを繋げて作る鎖がひかれ、前の黒板には『悟史今までありがとう』の文字と、その周りまできれいにデコレーションしてあった。 「悟史、これ」 この1年半、一緒に過ごしてきた親友ともよべる存在になった折原直巳(おりはらなおみ)と笹原美祐(ささはらみひろ)が照れ臭そうに、花束と色紙を渡してくれた。 色紙には、もう書くところがないくらいクラスのみんなからのメッセージが書かれていた。真ん中には先生にからのメッセージ。 これだけの短期間に、よくこんなに用意ができたなと感心しながら、不覚にも涙ぐんでしまった。 目敏い直巳が気がつかない訳がなく。 「おい、悟史泣いてるぞ!『いつもクールぶってる悟史を泣かせてやろうぜ』作戦成功だ!」 「うっせぇ!!なんだ、その作戦!」 笑いが響く。 そして俺たちは、時間をつくってくれた先生に感謝しつつ、1限の間目一杯楽しんだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!