第三章 晶輝

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「俺達も行こうか?」 胡々の元へ踵を反す和珠の背中が大きく見える。 ――和珠の御蔭で、今、俺はここに居られるんだ―― 俺はたくさん和珠に救われてきたんだと、実感する。 そんな和珠と俺は対等に戦えるのかな? 勿論、負けるつもりは無いけれど。 じっと和珠の背中を見詰めていると、和珠がこちらを振り返り手招きした。 「晶輝、具合でも悪いのか?」 「……いや、和珠っていい奴なんだなって思って」 するりと口にした一言に、和珠は柔らかく微笑んだ。 「なんだよ、もう降参するのか?」 「ッ/////違うッ!!そうじゃなくて!逆に、こう、負けられないっていうか……」 「そうだな、負けられないな……でも、敵は俺だけじゃ無いぞ?」 「えッ!?……ああ、大君候補の二人か……」 「……それだけじゃ無いんだよな……」 「ッ!?」 ぽつりとそう呟いた和珠は胡々の背に跨がると、驚きから固まる俺に手を差し延べる。 「続きは帰ってからだ、行くぞ!」 俺の恋は障害ばかりみたいだ。 でも。 琥珀は渡さない。 誰が相手でも、負けたくないから…… 俺は和珠の手をしっかり握り締めた。
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