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静かな闇が辺りを包んでいる。
規則的に揺れる灯が、暖色の円を象(カタド)り、長い回廊の模様のように列ぶ。
交代休憩から戻る最中、突然大きな氣の乱れを感じた。
禍禍(マガマガ)しいのに、酷く寂しさが伝わって来る。
「檸檬(レモン)!?」
『……まさか、これは!?』
「どうしたんだ!?」
『…』
僕は氣配を朧げにしか読め無い。
頼りは僕の契約体、檸檬なんだけど。
檸檬が言葉を濁すなんて、一体どうしたんだろう。
だが、檸檬の沈黙も長くは続かなかった。
『……絽久様!陛下が!!』
「琥珀が!?」
僕は走り出した。
此処から琥珀の寝室までは、まだ大回廊を二つ渡りきらなければならない。
こんな時、いつも思う。
――僕に氣を詠む才があったら、秘術が使えるのに――
間に合ってくれ!!
一つ目の大回廊を渡り終え、二つ目の大回廊に差し掛かった時だった。
窓から差し込む月明かりの中で、女官が倒れていた。
「大丈夫か!?」
抱き上げると女官は微かに声を発した。
外傷も無いようだ。
胸を撫で下ろしたその時、眼前に伸びる回廊に次々と倒れ込んでいる女官達の姿があった。
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