第四章 仁 絽久

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――― 静かな闇が辺りを包んでいる。 規則的に揺れる灯が、暖色の円を象(カタド)り、長い回廊の模様のように列ぶ。 交代休憩から戻る最中、突然大きな氣の乱れを感じた。 禍禍(マガマガ)しいのに、酷く寂しさが伝わって来る。 「檸檬(レモン)!?」 『……まさか、これは!?』 「どうしたんだ!?」 『…』 僕は氣配を朧げにしか読め無い。 頼りは僕の契約体、檸檬なんだけど。 檸檬が言葉を濁すなんて、一体どうしたんだろう。 だが、檸檬の沈黙も長くは続かなかった。 『……絽久様!陛下が!!』 「琥珀が!?」 僕は走り出した。 此処から琥珀の寝室までは、まだ大回廊を二つ渡りきらなければならない。 こんな時、いつも思う。 ――僕に氣を詠む才があったら、秘術が使えるのに―― 間に合ってくれ!! 一つ目の大回廊を渡り終え、二つ目の大回廊に差し掛かった時だった。 窓から差し込む月明かりの中で、女官が倒れていた。 「大丈夫か!?」 抱き上げると女官は微かに声を発した。 外傷も無いようだ。 胸を撫で下ろしたその時、眼前に伸びる回廊に次々と倒れ込んでいる女官達の姿があった。
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