第四章 仁 絽久

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警護が厳しい後宮内でこんな事態が起こるなんて。 「絽彗(ロスイ)に知らせて!!応援を寄越してくれ!!」 『御意!』 女官を丁寧に寝かせると、僕は再び走り出した。 倒れている女官達の傍を通り過ぎる度、押し寄せる不安に胸が締め付けられそうになる。 ――僕が傍から離れなければ―― 辿り着いた琥珀の寝室の前では、護衛中の仲間が二人と麻畄が気を失って倒れていた。 「そんなッ!?」 開け放たれた黒檀の扉。 「琥珀ッ!!!」 飛び込んだ室内の床に白磁の鞘が転がっている。 辺りを見回すも白剣は何処にも無い。 最悪だ。 寝所への扉が、開いている。 「ッ!!」 駆け込んだ室内で僕が見たモノは――!? 大きな寝台の中央に散らばる黒い髪。 白い肌に月光が降り注ぐ。 震える手を琥珀の口元へ伸ばす。 翳(カザ)した掌に、規則的な吐息が届く。 瞳を閉じた琥珀の綺麗な顔は、安らかな寝顔だった。 僕の張り詰めた緊張が一気に解(ホグ)され、膝から崩れ落ちる。 「……良かった……ッ!!」 寄り掛かった寝台の上に蹲(ウズクマ)る。 翳した掌を頬に宛行(アテガ)った。 掌に伝わる温もりが、嬉しい。
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