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警護が厳しい後宮内でこんな事態が起こるなんて。
「絽彗(ロスイ)に知らせて!!応援を寄越してくれ!!」
『御意!』
女官を丁寧に寝かせると、僕は再び走り出した。
倒れている女官達の傍を通り過ぎる度、押し寄せる不安に胸が締め付けられそうになる。
――僕が傍から離れなければ――
辿り着いた琥珀の寝室の前では、護衛中の仲間が二人と麻畄が気を失って倒れていた。
「そんなッ!?」
開け放たれた黒檀の扉。
「琥珀ッ!!!」
飛び込んだ室内の床に白磁の鞘が転がっている。
辺りを見回すも白剣は何処にも無い。
最悪だ。
寝所への扉が、開いている。
「ッ!!」
駆け込んだ室内で僕が見たモノは――!?
大きな寝台の中央に散らばる黒い髪。
白い肌に月光が降り注ぐ。
震える手を琥珀の口元へ伸ばす。
翳(カザ)した掌に、規則的な吐息が届く。
瞳を閉じた琥珀の綺麗な顔は、安らかな寝顔だった。
僕の張り詰めた緊張が一気に解(ホグ)され、膝から崩れ落ちる。
「……良かった……ッ!!」
寄り掛かった寝台の上に蹲(ウズクマ)る。
翳した掌を頬に宛行(アテガ)った。
掌に伝わる温もりが、嬉しい。
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