350人が本棚に入れています
本棚に追加
「晶輝となんで喧嘩したの?二人で話し合ってちゃんと仲直りできる?」
女帝を見詰める左将軍の瞳には、何か暗い光りが宿っている。
あの瞳は……
「…」
女帝は左将軍の暗い瞳に気付いていない。
立ち上がると、腰に両手を当てて言い放った。
「もうっ!琉国元帥として、紅左将軍に三日間の謹慎を言い渡します!!……反省しなさい!」
女帝は大夫に剣を渡すと、足早に退場して行った。
その後ろ姿を切なげに見詰める左将軍の視線を、やはり知らぬまま……
「……鈍い陛下も悪いけど、左将軍にも困ったなぁ」
蛍夕の呟きが、胸中を思わず口にしてしまった自身のものかと驚いて振り返る。
苦笑いを収めてから、大夫に付き添われて退場する左将軍を見送りながら蛍夕は口を開いた。
「……あれが再三貴国からお断りしていた婚儀を承諾した理由です」
帝国は琉国の鎖国解消と同時に、竜の使役に成功した女帝との婚姻を望んでいたのだが、国力回復を理由に長い間回答を保留にされていたのだ。
「琉国が閉じこもっている間に、諸外国は今も地図を書き換えています……このままでは、我が国もいずれ強国に脅かされることでしょう」
最初のコメントを投稿しよう!