第一章 シド・シュテイン・ネスメヤーノフ・ダリヤ

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――― 「はい、こちらで結構です。お疲れ様でした」 建若の微笑みを見て、琥珀は執務室の大机に突っ伏した。 「終わった!!」 机上の決済書簡の山を部下に運ばせながら、建若は琥珀の顔を覗き込む。 「間に合いましたね、陛下」 机に頭を乗せたまま、琥珀は柔らかく笑う。 「うん、手伝わせちゃってごめんね建若。自分の仕事もあるのに……」 「明日は特別な日ですからね。久方振りの小休止です、陛下もゆっくりなさいませ」 「うん!」 退出する建若の部下達と入れ違いに麻畄が一礼して入室すると、大きな伸びをする琥珀に駆け寄る。 「陛下!北君がお越しです」 「シドが?」 「はい」 麻畄の笑顔は眩しいが、シドにまたからかわれたくは無い。 「断っ」 「……てはいけません」 二の句を封じ、建若が麻畄にシドの案内を命じる。 「建若っ!?」 「いいですか、陛下?政務に御熱心なのは良いことですが、肝心の後宮に足が遠退いておられる……陛下はいつ大君を選ばれるお積りですか?」 「……ごめんなさい」 建若は琥珀の回答に満足するとシドが入室する前に、麻畄を連れて退出した。
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