第一章 シド・シュテイン・ネスメヤーノフ・ダリヤ

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――― 執務室の扉が開かれる。 「いらっしゃい、シド」 意外にも女帝の出迎えで、用意されたテーブルを勧められる。 女帝の引き攣った笑顔が面白い。 女帝の傍では、自然と笑みが零れてしまう。 「陛下がこんなに接待してくれるなんて、熱でもあるのか?」 「どーいう意味よ!訪ねて来てくれたんだから普通でしょ?」 虚勢を張る女帝だったが何故か動揺しているようで、椅子に座る際何も無いところで爪先をぶつけている。 この様子から察して、先程挨拶した宰相が一枚噛んでいるとみた。 机に向かい合い席に着くと、女帝は慌てて茶を一気に飲み干す。 狼狽える様が可愛かったので、やっぱり遊んでしまった。 「どーせ、断ろうとしてあの宰相に止められたから気まずいんだろ」 「ぶッ!?」 茶を噴くとは図星らしい。 だが、出迎えてくれた事が嬉しかっただけに、会う事を避けられていた事実が少し切ない。 ――切ない?俺が? 思いがけない感情に戸惑う。 「……シド?」 女帝の声に我に返る。 今は女帝にこれを渡しに来たのだから。 この感情は後回しだ…… 俺は頭を振ると、女帝に微笑んだ。
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