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―――
執務室の扉が開かれる。
「いらっしゃい、シド」
意外にも女帝の出迎えで、用意されたテーブルを勧められる。
女帝の引き攣った笑顔が面白い。
女帝の傍では、自然と笑みが零れてしまう。
「陛下がこんなに接待してくれるなんて、熱でもあるのか?」
「どーいう意味よ!訪ねて来てくれたんだから普通でしょ?」
虚勢を張る女帝だったが何故か動揺しているようで、椅子に座る際何も無いところで爪先をぶつけている。
この様子から察して、先程挨拶した宰相が一枚噛んでいるとみた。
机に向かい合い席に着くと、女帝は慌てて茶を一気に飲み干す。
狼狽える様が可愛かったので、やっぱり遊んでしまった。
「どーせ、断ろうとしてあの宰相に止められたから気まずいんだろ」
「ぶッ!?」
茶を噴くとは図星らしい。
だが、出迎えてくれた事が嬉しかっただけに、会う事を避けられていた事実が少し切ない。
――切ない?俺が?
思いがけない感情に戸惑う。
「……シド?」
女帝の声に我に返る。
今は女帝にこれを渡しに来たのだから。
この感情は後回しだ……
俺は頭を振ると、女帝に微笑んだ。
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