第二章 紅 真珠

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「琥珀はッ!?そんなに悪いのか!?」 いきなり、胸倉を掴まれたかと想うと、眼前に張り詰めた形相の和珠が居た。 視線が激しくぶつかる。 「……高熱により、本日は御公務を取りやめていますが、しっかりお休み頂ければ問題無いそうです」 胸を撫で下ろす和珠の拳から力が抜けていく。 「……晶輝、様に……」 和珠の苦しげに搾り出す言葉に、耳を傾ける。 「……『琥珀に、ちゃんと気持ちを伝えろ』って……」 予想通りの和珠の言葉に脱力してしまう。 「…」 「……そしたら『伝えることなんて、出来ない』っていうから……」 晶輝様の御立場から鑑(カンガ)みれば、当然の答えでしょうに。 「……『お前の気持ちは、その程度なのか』って……」 和珠のあまりにも無神経な一言に、私の我慢も限界を迎える。 「……それは一戦交えますね」 「だろッ!?」 「貴方に同意してはいませんよ。私は晶輝様の御気持ちを述べたまで……」 和珠が掴む腕もそのままに、今度は私が和珠の胸倉を掴み、互いに激しく睨み合う。 「結ばれないと理解しているからこそ、秘めねばならない気持ちが解らないのですか!?」
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