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「……成る程……」
俯く和珠に、不可解だった二人の衝突に漸く合点がいった。
晶輝は竜だ。
竜は琉国の神獣にして、皇帝しか見(マミ)えぬ存在。
皆、晶輝を神と崇め畏(オソ)れているが。
和珠は晶輝を『神』ではなく、晶輝が望む『性分』を見てくれる僅かな友人でもあるのだ。
だからこそ、晶輝の言葉により感情的にぶつかってしまったのだろう。
和珠は本来、諍(イサカ)いを招くような人間ではない。
「……『らしくない』、ですね……」
戸惑う和珠に笑いかける。
「……芬皖からの伝言ですよ。」
「……そっか、そうだよな」
頭を振るう和珠の口元に笑みが零れる。
「晶輝とちゃんと話すよ……ありがとな、兄貴」
「いえ、私の方こそ目が覚めたようです……」
和珠の言葉で。
自身の憂いを吐露したことで。
「……このままでは、私もらしくありませんね」
不思議そうに見詰める和珠に微笑む。
「可愛い弟のためにも、全力で挑みましょう」
「!?」
「実の弟が恋敵ですか、燃えますね」
「なッ!?」
狼狽える和珠に宣戦布告すると、私は部屋を後にした。
軽くなった足取りと共に。
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