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【ぽたり】
雫が頬を伝って、琥珀の頬に落ちた。
琥珀の見開かれた瞳に映る私が、泣いている。
堰(セキ)を切った感情が涙に変わっていることに、今、漸く気付いた。
堪えに堪えた秘めたこの想いが大き過ぎたのだろうか?
かつてこれ程感情を揺さ振られたこと等、無い。
感情をぶつけた戸惑いのままに、どうして琥珀を抱けるだろう。
「……真珠?」
無理矢理に組み敷かれているというのに。
琥珀は切ない程優しい声で、私の名を呼んだ。
琥珀の前で、否、他人の前で初めて流した涙に、琥珀も動揺しているようだ。
琥珀の声に弾かれたように身を離すと、両腕の拘束を解き、瞳を伏せたまま声を絞り出した。
「……どうか、このまま御戻り下さい!」
身体を起こした琥珀が口を開こうとするが。
【コンコン、コン】
半開きの扉をノックした人物は。
「ルイ!」
いつの間にか室内へ現れたルイは、足早に琥珀に近寄ると自身の上着を羽織らせた。
「これが、真珠の応えですね?」
私の沈黙を了承したものと受け取ったのだろう。
優しい微笑みと共に琥珀を連れて、ルイは静かに退出した。
涙が、とめどなく流れた。
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