第三章 晶輝

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――― 初めて琥珀に出会ったのは、水鏡の底に揺らめく下界の映像。 ― ― ― この日、琉家の新しい命の守護竜に俺が選ばれた。 皇帝と導師の間に誕生した希有な御子…… 先代は、后の数に反して御子はたった一人しか生まれなかったから。 久し振りに守護する御子を得て、俺は上機嫌だった。 守護者が居なければ、水鏡は使えない。 琉国の竜は神獣だから、むやみに下界に降りられないのだ。 ――永い永い時を閉じた世界で生きる俺にとって、下界を覗ける守護職は、唯一の楽しみだった―― 絶好の機会を与えてくれた御子は直ぐに見付かった。 琉国皇帝の居城、泰白宮後宮南殿。 大切に大切に抱かれた小さな手。 柔らかく微笑む導師の瞳があんまり優しいから…… 仕事なんて軽く流すつもりだったのに。 真面目に御子を見守ろうなんて思ってしまった。 御子は『琥珀』と名付けられた。 琥珀は従兄弟達に護られて、元気に成長した。 導師が居ない時に流す涙が、少し心配だったけど。 兄弟達とも皇族には珍しく仲が良いし、他の皇女達と同じように美しい城の中で穏やかに一生を終えるのだと思っていたのに……
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