第三章 晶輝

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ある日、いつものように水鏡を覗くと。 水底が緑色の閃光に包まれた。 思わず閉じた瞼を開くと、水鏡に見知らぬ石畳に座り込む琥珀を抱え込んだ真珠の画が現れた。 一体何があったのだろうか? 琥珀達はまるで逃げるように当てもなく駆け出していく。 二人の息が上がった頃。 おかしな着物を身につけた女に話し掛けられた後、赤く点滅する光りを放つ不思議な箱に押し込まれて連れていかれてしまった。 この不可解な事態に困惑していると。 「晶輝様!」 「角箔(カクハク)……?」 父上の側近、堅物の蛟(ミズチ)が険しい面持ちで膝を着いた。 長い白髪が床に散らばる。 「黄帝陛下が御呼びです!」 ― 父上の話は、信じがたいものばかりだった。 皇太子泰斗の暗殺。 皇帝古琅の発病。 後宮の粛清に、西后可王水(カ オウスイ)の独裁。 そして、導師の失踪と。 琥珀の異世界への亡命。 琥珀の事しか観ていなかったから、後宮の異変に全く気付いていなかったのだ。 ――琥珀の守護竜なのに。 無知な自分が恥ずかしくて情けなくて、悔しかった。 「非常時だ!!琥珀を助けなきゃ!父上ッ!?」 「それはならん」
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