第三章 晶輝

4/31
350人が本棚に入れています
本棚に追加
/406ページ
「でもッ!?」 「忘れるな、我等は琉水晶との盟約を護るのみ。天より守護者の生き様をその眼に宿せ」 「ッ!!」 いてもたってもいられなくて。 角箔の制止を振り切り、講堂を、回廊を駆け抜け、水鏡に向かった。 白い円状の術式が施された小さな泉。 俺は水鏡の前に、幾日も座り込んだ。 ――琥珀が笑ってくれた日まで。 琥珀が異世界に馴染んでいく度に増えていく笑顔が嬉しくもあり、こちらの世界を忘れていく様は寂しくもあった。 ― 導師の術が効力を失い始めた頃。 琉国は完全に王水のモノだった。 土地は荒廃し、涸渇した民は惑い、苦しみ、その手に武器を取っている。 ――こんな時代に戻されるなんて!! 俺の不安通り、琥珀は帰国後直ぐに命を狙われた。 どんなに助けてあげたくても、ただ観ていることしかできない…… だから、琥珀が竜泉郷に来てくれた時に誓ったんだ。 契約は、絶対護る。 これからは傍に居るんだ。 今まで護れなかった分まで、これからはずっと俺が琥珀を護るんだ……!! ― ― ― 琥珀が帝位に就いて、三年。 変わらない日常が何時までも続くと思っていたのに……
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!