第三章 晶輝

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珍しく早起きした朝、いつもなら寝坊している時間に朝儀に出席する事が出来た。 得意げに席に着くと、琥珀が笑顔で迎えてくれる。 「おはよう、晶輝。今朝はちゃんと起きれたんだね。偉い偉い」 優しく頭を撫でられた。 「う、うん////!」 褒めてくれて、嬉しいんだけど。 なんだか琥珀は最近背も伸びて大人びたせいか、こうやって俺をあやすような仕種が増えた。 俺の人身の姿がずっと変わらないから……? なんて朝儀中にぼんやり考え事をしていると。 「わたしが結婚!?」 琥珀が信じられない事を口にした。 話を続ける蛍夕の声を、何処か遠くに感じながら、今にも叫び出しそうになる。 琥珀の『特別な存在(ソバ)』は契約体の俺の居場所だ、と。 どうしてこんなに悲しいんだろう…… 「晶輝?」 気付くと朝儀は終わっていて。 講堂には、俺と琥珀しか居なかった。 俯く俺の顔を琥珀が心配そうに覗き込む。 「どうし……」 肩に手を置かれた刹那。 この温かい掌が他の『特別な存在』に向けられるのかと思うと、凄く寂しくて。 【ガタン】 琥珀に何も言えなくなって、そのまま講堂を飛び出した。
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