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「こんにちは。〇〇運送です」
「お疲れ様です。」
外に出ると同時に車から配達員が荷物を持って走ってきた。
「こちらがお届け物になります。」
俺は荷物を受け取り、ハンコを押す。
「ありがとうございました。」
そう言いながら配達員はハンコが押された紙を受け取ると車に戻った。
「う~…さぶっ……。」
肌を刺すような寒気に俺は首をすくめる。
店内に戻ると、兎男が珈琲を淹れている所だった。
「あぁ、悪ぃ。お疲れさん。珈琲飲むだろ?」
「はい、頂きます。」
それだけ聞くと、兎男は顔を珈琲の方に戻して作業を再開する
兎男が俺に出してくれるのは、いつもエスプレッソだ。
直火式エスプレッソな為あまりクレマが立たないが、俺はクレマにこだわりが無いので問題ない。
エスプレッソはイタリアでは万人に愛されて、よく飲まれている家庭的な珈琲だ。
深めに煎った豆を極細挽きにして圧力をかけ抽出するのだが、直火式は蒸気圧によってそれを行う。
日本の家庭ではエスプレッソマシンなんて普通置いてないのでここで飲めるのはとても嬉しい
なに?そんなのちょっと街にでれば飲めるだろって?
甘いな……
この店のエスプレッソはそんじょそこらの店とは比べものにならないくらい味わい深い。
疑うなら是非来店していただきたいが、今日の午後の部は止めてね?
「ほらよ、出来たぜ。」
とか何とかやってる間に作業が終わったらしく、兎男がエスプレッソの入ったカップを俺に手渡す。
「ありがとうございます。」
俺はカップを受け取ると早速口をつける。
………うん、美味い。
鼻から抜ける香りがなんともいえない。
最早、この一杯の為に働いている様なものだ。
「おい、そう言えばさっきの荷物何だったんだんだ?」
兎男が俺に訊ねる。
そうだった。
俺は先程受け取った荷物をカウンターの上に置く。
そして俺達は伝票を見た。
「……………はっ?………」
二人の声がハモる。
そこには、
差出人不明
内容物:パンドラの匣
としか書いてなかった。
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