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そこは深い森でした。朝も昼も夜も、森はいつも真っ暗です。
「ここは、どこかしら?」
一人の女の子が森で迷っていました。おつかいの途中でした。早く村に帰らなければ、夜になってしまいます。きっとお母さんも心配しているでしょう。
―――ガサガサ
すぐ後ろで音がしました。女の子は震えながら、ゆっくりと振り返ります。
(オオカミさんじゃ、ありませんように)
茂みから出てきたのは、一匹のウサギでした。不思議なことに、白いフワフワの毛が光って見えました。
「おじょうさん、おじょうさん、ここで何をしているんだい?早く帰らないと食べられてしまうよ」
ウサギは早口に言いました。
「あらウサギさん。実は迷ってしまったの。この森には、オオカミさんがいるのね!」
女の子は青ざめました。もしオオカミがいたら、静かにしなければなりません。オオカミは耳が良いですから、すぐに見つかって、食べられてしまうのです。
「大丈夫だよ、オオカミはいないよ」
「あら、そうなのね」
オオカミがいないのなら、気持ちも少し落ち着くというものです。女の子の友達も昔、森でオオカミに出会ったそうです。病気のおばあさんのお見舞いに行った時のことで、その時はきこりのおじさんの助けを借りて、オオカミをやっつけたのよと、得意気に話してくれたのを覚えています。
「でも、もっともっと怖いのがいるよ」
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