白いウサギと黒の森

2/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 そこは深い森でした。朝も昼も夜も、森はいつも真っ暗です。 「ここは、どこかしら?」  一人の女の子が森で迷っていました。おつかいの途中でした。早く村に帰らなければ、夜になってしまいます。きっとお母さんも心配しているでしょう。  ―――ガサガサ  すぐ後ろで音がしました。女の子は震えながら、ゆっくりと振り返ります。 (オオカミさんじゃ、ありませんように)  茂みから出てきたのは、一匹のウサギでした。不思議なことに、白いフワフワの毛が光って見えました。 「おじょうさん、おじょうさん、ここで何をしているんだい?早く帰らないと食べられてしまうよ」  ウサギは早口に言いました。 「あらウサギさん。実は迷ってしまったの。この森には、オオカミさんがいるのね!」  女の子は青ざめました。もしオオカミがいたら、静かにしなければなりません。オオカミは耳が良いですから、すぐに見つかって、食べられてしまうのです。 「大丈夫だよ、オオカミはいないよ」 「あら、そうなのね」  オオカミがいないのなら、気持ちも少し落ち着くというものです。女の子の友達も昔、森でオオカミに出会ったそうです。病気のおばあさんのお見舞いに行った時のことで、その時はきこりのおじさんの助けを借りて、オオカミをやっつけたのよと、得意気に話してくれたのを覚えています。 「でも、もっともっと怖いのがいるよ」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!