稼業

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『して、稼ぎはあったのか?』 何気なく聞いたつもりではあったのだが、何かが小娘の気に障ったのであろう。 机に頬杖をつきながら、こちらを一瞥し、若干の怒気を含んだ声で応えた。 「『おかえり』より先に稼ぎとはね。 アナタ、本当に自由よね」 『…自由?小娘、戯言も大概にしろ』 我が自由だと? 知らぬとは言え、流石にこの言葉は許せん。 「な、何怒ってるのよ?」 『発言には責任を持て。 我とて、許せぬ事はある』 特に先程の発言はな。 自由など、どれだけの時間渇望した事か。 それでも、手に入る事など無かった。 悪気が無いのは声の抑揚からも分かってはいる。 「…良いわ、アタシもアナタの態度にはちょっとイライラしてたの」 どうやら、小娘も虫の居所が悪かったらしい。 たが、お互いに引くタイプではないのも事実。 『良かろう、ではどちらが先に折れるのか勝負といこうか』 そろそろ、小娘との主従関係をハッキリさせるべきだ。 「乗ったわ。 アタシ、こう見えても気は強いからね」 例え無駄な争いと分かっていても、引けない時はある。 こうして、我と小娘の無意味な我慢比べが始まった。
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