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自らの名誉のためにも、先導者は選定者を見定める期間をもつ。
大体が数ヶ月から、長くて1年に満たない時間で見定めるので、アリエルは丁度その真っ只中であった。
『実を言うとな』
少し声を暗くし、ラミアはアリエルに伝え始めた。
『先導者として、小娘に期待する事は諦めようと思っていた』
「…理由は?」
神妙な顔持ちでアリエルは聞き返す。
その表情は何となく分かっていると言わんばかりだ。
『…私の思い描く、選定者としてあるべき姿とはかけ離れていたのでな』
「…『愚王』に、なるかも知れないから?」
『…そうだな。そう思った事もあるな。』
アリエルはやっぱりと頷く筈だった。
しかし、そう出来なかったのは引っ掛かる言葉を聞いたからだ。
「『事も』…って、それ以外も理由が有るの?」
一層暗い表情になっていくアリエルは、堕ちた天使の様に憂いを纏っている。
一般人であれば鬱蒼とした雰囲気を醸し出すだけであろうが、端正な顔立ちをしているだけに、虚な目が良く映えるのだ。
百面相とまでは言わないが、冷静沈着に見えて案外…、とは言えるだろう。
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