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『小娘よ、【陽の謳】を知っているか?』
知るわけがないとは分かっている。
今の文明はあの頃とは違う。
伝承されているとは思えない。
現に我も伝承されたから知っているだけで、実際の謳を聞いた事はないのだ。。
…だが、もし知っていたらと、期待している自身を否定は出来ない。
この世界の文明は必ずリフレインする。
あの頃から、幾多の文明が世界を彩ったであろうか。
優しく、生命に満ち溢れた文明もあった。
反対に、恐ろしく、破壊と暴力に支配された事も。
そんな時であろうと、【陽の謳】は先導者と選定者を光へと誘った。
まるで道標の様に。
真実を確かめる事は出来なくても、信じる事は出来る。
それだけの能を持っているのだ。
「アタシは知らない。
でも、何だろう。凄く聞きたい」
知らぬか、そうだと分かっても少しばかりの落胆はある。
だが確かに、この娘は同じ事を考えている。
本人に自覚があるとは欠片も思わないがな。
『いつか聞かせてやろう』
ケチと言う言葉やらが発せられてはいるが、耳を傾ける必要はない。
我が何年生きていると思っているのか、その程度の低級な単語で何も思う筈がなかろう。
「この…、年増!!」
『もう1回言ってみろ小娘!!』
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