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『…ク…ファ…、貴方を…………ごめ…………』
所々にノイズが掛かったような会話。
分かるのは声の主が溢れる様な悲しみを抱いていること。
『待って、聞き取れないわ!?』
意味を知りたくて女は聞き返すが、ノイズは消えない。
『幸…………て…』
『っ!?聞こえないわ!!』
女の願いは叶うことなく、彼女は光に飲み込まれた。
「待って!!」
飛び起きた声の主は、自分の身体が僅かに震えている事に気付かない。
「また、あの夢」
寝汗で身体に張り付く寝巻が気持ち悪い。
言いようのない気持ち悪さに、頭をすぐに支配される。
「…最悪、髪洗わなきゃ」
夢よりも寝汗よりも、ベトつく髪が1番気に障ったようだ。
「ったく、何で夏ってこうも暑いのよ」
身体を起こし女は愚痴る。
眉間に皺を寄せ髪を荒々しく掻きむしる様からは、繊細のせの字も感じられない。
そして女のストレスが最高潮に達し、部屋に怒号が響いた。
「あぁ~、もうなんかイラつくぅ!!」
『…煩いぞ小娘、もう少し静かに出来んのか?』
不意に響く言葉。
いや、正確には声ではないため『響く』ではないが、それは確かに理解出来るのだ。
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