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「ねぇ、にゃーさん。」
ご主人様は時々、悲しい表情で、悲しい声で僕の名前を呼ぶ。
「どうして、僕は小野君なんかを好きになっちゃったんだろうね。」
小野君?…あぁ、最近、やたらこの家にくる人か。ご主人様は小野君っていう人が好きなの?
「小野君は男で、もちろん僕も男。ねぇ、にゃーさん、僕、もう辛い…よ」
そう言って膝に顎を載せて縮こまるご主人様。目からは一粒の雫がこぼれ落ちる。
泣かないで―。僕がいるから泣かないでよ。
ペロリと頬を舐める。僕にはこうやってでしか慰められないから。
「…ははっ、くすぐったいよにゃーさん。」
あっ、笑った。やっぱりご主人様には笑顔が似合う。僕の大好きな笑顔…、どうやればたくさん見れるようになるだろうか。
ああ、そうだ。
ご主人様、あなたの寂しさが無くなるように僕頑張るから。だから―、もう泣かなくたっていいよ?
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