僕のご主人様はとてもとても寂しがりやな人なんだよ。

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「神谷さん。じゃあ、俺そろそろ帰りますね」 またいつものように小野君が遊びに来ていた。小野君がいる時はよく笑う。愛しい人に向ける笑顔で。その時のご主人様の笑顔は一番輝いている。 「あ…、」 ご主人様の答えを聞く前に小野君がソファーを立つ。少し遅れてご主人様も。 今、何か言い掛けた…気がした僕はご主人様が言えるように小野君の足を噛んだ。正確にはズボンの布を噛んで引っ張ったんだけど。 「ん。どうしたのにゃーさん?」 にゃー。 "まだ帰っちゃだめ" 「にゃーさん?小野君帰るから離してあげて」 にゃー "早く言って、早く" 「神谷さん、今日泊まってもいいですか?」 「えっ…あ、うん!」 そう言って笑ったご主人様の顔は本当に嬉しそうで何だか僕も嬉しくなった。 「にゃーさん、ありがとう」 小野君に聞こえない声でそっと囁く。にゃーとだけ返し、邪魔にならないようにいつもの場所へと向かう。 .
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