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『小野君なんて、嫌いだ。もう、帰れよ』
気が付いたら、そう口にしていた。一番言ってはいけない言葉だったのに。だけど、これは僕のせいじゃない。
少しは悪いかもしれないけど…。
こうなったのはほんの少し前。小野君が僕の家に遊びに来ていた時のこと。
「神谷さあん!」
甘ったるい声で僕の名前を呼ぶ小野君。だけど、僕は無視を決め込む。
「神谷さん?」
「…………。」
「……。何で無視するの?俺、何か気に障ることしましたか?」
気に障ること…ねぇ!あぁ、凄く気に障るよ。何この匂い。女性特有の甘ったるい香水の匂い。
今まで何してたの?
余程近付いてなきゃ、香りなんて移らないんじゃないの?ねぇ、小野君はやっぱり―。
「……て……よっ!」
「え、今なんて?」
「帰って、今日はもう帰れよ!小野君の顔なんか…、見たくない!」
「ちょ、神谷さん!?何があったんですか、急に帰れって意味が判りません。理由を…「小野君なんて嫌いだ、もう帰れよ。」
意味が判りません、神谷さん!?と懸命に叫ぶ小野君を無視して無理矢理玄関の外に連れ出した。扉をすぐに閉めて鍵をかける。
「…………バカ」
ごめん、小野君、ごめんね。
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