喜びの章Ⅰ

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「あんたは大丈夫。あたしが保証するから頑張れ」 「ハナさん…どうしたんですか?」 いつもと違う様子に気づいたゆずの言葉にハナは困惑していた。 「ん、まぁ色々とね…」 ハナが言葉を濁している時、ドンドンと扉を叩く音がした。 2人はその方に顔を向けると扉は開き、翔太が現れた。 「いきなりごめん。ハナちょっといいか…」 「さっきの続きなら勘弁だよ」 ハナは翔太から顔を反らす。 「違う。青田さんが呼んでる」 「オーナーが?」 翔太の言葉に驚いた声をあげたのはゆずだった。 「分かった。すぐに行くよ」 ハナは手にしていたペットボトルをゆずに渡して、翔太のもとへ歩いていく。 「ハナさん…」 ハナが振り返りゆずの顔を見る。 眉が下がったその顔は、心配で仕方ないといった様子だった。 ハナは笑顔を向け大丈夫と小さく呟き、翔太と共に控え室から出ていった。 「さて、行くか。って呼び出しか…怒られなきゃいいなハナぁ」 翔太はわざとらしく呟いてハナに顔を向ける。 その顔は言わんこっちゃない…と言いだけだ。 しかし、ハナは彼に見向きもせず、また答えることなく無言で歩き始めた。 その様子を見た翔太は舌打ちをし、ハナの後を追い歩く。この店にはハナ達がいた控え室を除いて後2つ部屋がある。 1つ目はハナ達の控え室のすぐ前にある翔太、つまりは黒服もしくはキッチン要因である男達の控え室。 ホール側から見て右側に位置する。 2つ目は通路の一番奥にあるオーナーの青田と呼ばれた人物がいる部屋。 普段から居る訳ではないが、採用の面談や何か用事ある際に使用している。 もちろん、ハナ達が向かうのは後者の部屋だ。 *
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