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「こんばんは。ハナでぇす」
アイラインとマスカラを幾重にも重ね、少々つり上がった力強い目元。
他の色には染まらないと思わせる程に黒く、腰元まで伸びる真っ直ぐな髪。
そして、まるで男を挑発するように胸元が大きく開いたドレス。
そんな彼女の声は以外にも甘く、そして柔らかかった。
「おぉ…」
彼女の対面、ソファーに座る男は小さく歓喜の声をあげる。
彼女の美しさに目を奪われているのだろう。
「…ハナちゃんか。綺麗だね」
男は少しだけ間を開けて声をかける。
「いえっ。そんな事ありません。社交辞令でも恥ずかしいですからそんな事言わないでください」
彼女はさっと両手で顔を覆い、首を俯かせた。
男に言葉はないものの、少々だらしのない笑顔を浮かべる。
彼女の仕種については、好き嫌いが分かれるだろうが、少なくともこの男は嫌いではない。
むしろ好きな部類なのでだろう。
「いやぁ…本当に綺麗だよ。というより可愛い。まぁ、ハナちゃん座ってよ」
男は急かす様に促す。
「はい。失礼します」
彼女は笑顔を浮かべながら男の右側になるよう、ソファーへ腰をおろした。
「僕は田辺って言います。あっ、そうだ…好きなもの飲んでいいからね」
「はい、ありがとうございます。それじゃ田辺さんと同じものをいただいてもいいですか?」
田辺はもちろんと笑顔で言葉を返した。
ハナも同じく笑顔を返して軽くお辞儀をした後、黒服の男性を手招きで呼び、飲み物を注文する。
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