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「それからおじさん」
「ん?」
「外で僕に話し掛けないほうがいいよ」
僕は歩きだす。
じゃないと近所の目が気になった。
「僕の姿は他人には見えないんだから」
周りからみておじさんは独り言を呟いているようなものだ。
ハッキリ言って不審者にしか見えない。
「おお。そうか」
おじさんは僕につられて歩きだした。
「わっ」
すると急に手を繋がれる。
だから目を見開いておじさんを見上げた。
「ちょっとおじさ……」
僕は手を離そうとする。
このままだと彼の格好がおかしかったからだ。
「無言なんて寂しいじゃん」
だけど彼は手を離そうとせず、一言囁いて押し黙った。
(どこまで甘ちゃんなんだよー)
心の中で呟く。
だけどおじさんがあまりに満足そうだったから何も言わなかった。
(この状況をわかってるんだか、わかっていないのか)
どこまでもマイペースな彼の姿に不安は募る一方。
しかしおじさんの周りを流れる空気は居心地良い。
それはやはり彼の魂が気高く綺麗だからだ。
とにかく僕が今するべきことは彼をよく知ること。
僕はもう一度おじさんを見上げると少しだけ彼の掌を握り返した。
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