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ガチャガチャ――。
すると急に鍵を開ける音がした。
僕は立ち上がると近づいていく。
キィ―……。
そしてドアが開いた瞬間だった。
「うわぁぁぁ……!!」
入ってきた男はいきなり叫び声をあげる。
僕は首を傾げると腕を組んだ。
「なっなんでオレの部屋に子供が――……!!?」
彼は目を見開き、顔を真っ青にする。
僕も彼の言葉に少し驚くと更に近付いた。
「……おじさん、僕が見えるの?」
「おわっ!? だからなんなんだよ、お前っ!」
瞳に多少の恐怖を宿しながらドアを背にもたれる。
僕は恐がらせないようにニコリと笑ったが余計に彼の恐怖心を煽ったようだ。
確かに暗闇の中に真っ白な着物姿の子供が立っていれば恐いだろう。
だけど僕だって彼が座敷わらしを見られる人間なんて知らなかったのだから。
座敷わらしを呼ぶほど徳があっても、座敷わらし自体を見えるようになるには、さらに徳があり尚且つ気高く美しい心を持ってなければならない。
邪心が少しでもあればその瞳は曇り、僕を視界から映せなくなる。
だから子供の方が僕を見やすかった。
「へぇーおじさんすごいな」
目の前の男はよれよれのスーツを着て不精髭が生え髪の毛もボサボサ。
とてもじゃないけど美しく見えない。
「一体なんなんだ」
「ふふ。恐がらないで? 僕は貴方を幸せにするために来たんだから」
「…………は?」
男は腰を抜かしているのか座り込んだままだった。
僕はその前に立つとペコッとお辞儀をする。
果たして彼がどんな人物なのか興味がある。
そして僕が見えるほどの美しい魂がどれだけ汚く朽ち果てていくのか。
好奇心で心は踊った。
たまらなくて彼の手を掴む。
「初めまして、僕は座敷わらしと言います」
そして事細かに経緯を語り始めた。
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